真に効果のある医療政策の実現に向け、一緒に活動しませんか?

やれば「必ず」より健康的になれる○○!

皆さんは健康に気を使って食事を取っていますか?最近は「糖質制限食」や「乳酸菌飲料」、「脂肪の吸収を抑える食品」、「脂肪の燃焼を助ける食品」などなど健康補助食品が増えており、健康的な食事に対しての意識は高まっていますよね!しかし、これらの健康補助食品を摂っても効果が実際出ているのか正直分からない…と感じている方も多いのでは?(実際に上記にはエビデンスがなく、効果がないものが殆どです)

そんな皆さんに朗報です!食事の際に行えば必ず健康的になれることがあります。さて、何でしょうか?

 

答えは減塩です!

非感染性疾患および外因による死亡数への各種危険因子の寄与の大きさについて調べた研究によれば、食事関連の外因の中で女性では高血糖に次いで2番目に、男性では1番目に挙げられている危険因子が塩分の過剰摂取です。そして意外に思われるかもしれませんが、飲酒を控えるよりも減塩の方が健康の為に重要[1]なのです!

男女では高血糖の次に死亡寄与が大きい食塩摂取

この記事を読んでいて「自分はまだ若いから、血圧は低いから、減塩には興味ない…」と思っている方!そんな貴方にこそ、この記事を読んで頂きたいです。何故なら、塩分は過剰に摂取した場合に血圧を上昇させるだけでなく、日常の塩分摂取に応じて血圧上昇速度を高めます[2] (図2)。若い方であっても、今食べている食事に含まれる塩分量は将来の高血圧に大きく影響するのであり、減塩は高齢の方だけでなく、老若問わず気をつけるべきことなのです!

さらに、血圧は上がれば上がるほど、脳卒中や心筋梗塞、そして慢性腎臓病の疾患発症リスクが高まり [3](図3)、高血圧性疾患になりやすくなってしまいます…!

*至適血圧:最高血圧-119/最低血圧-79 中等症血圧:最高血圧160-179/最低血圧100-109

日本の減塩対策は啓発活動が中心

以上のように減塩は年齢に関わらず全ての人の健康にとって重要な問題であり、日本でも2015年4月より厚労省の食事摂取基準での男性の食塩摂取目標を8g未満、女性は7g未満と定めました(なお、WHOでは5g未満としています)。

現在の取り組みとしては、厚労省で作成された「-2gマーク」が任意で店頭表示されており、具体的な減塩に関する活動は一部の市町村や県単位で個別に行われています。また日本高血圧学会減塩委員会は、2013年より減塩に優れた食品紹介を開始し、2015年5月からは減塩化の推進に優れた成果を挙げた製品に対して「JSHアワード」の授与を行っています。このように、啓発活動が主に行われています。

「マイナス2gマーク」

 

啓発活動は減塩に効果があったのか…?

では、こうした啓発活動は実際に効果があったのでしょうか?塩分摂取量の推移を見てみると、下図のようになっています。平成28年時点の塩分摂取量は男性10.7g、女性9.1gと目標量(それぞれ8g未満/7g未満)には依然達していないものの、毎年塩分摂取量は減っているようです(図4)。

 

一見したところ、啓発活動により減塩が成功しつつあるように思われます。
しかし実際には、減塩の啓発活動はそれほど個人の減塩行動に繋がっていなかった可能性が高いのです。

なぜ啓発活動では塩分摂取量を減らせないのか

啓発活動単独では減塩が難しい理由を知っていただく為に、まずは大学生協で販売されているお弁当をご紹介します!

管理栄養士監修バランス弁当

こちらは「管理栄養士監修バランス弁当」です。このお弁当のように、多種類の野菜や白米以外も含まれているヘルシーな食事を意識して購入されている方もいらっしゃるのではないでしょうか?では、こちらのお弁当の塩分量を見てみましょう。まず、日本での塩分摂取目標量は7~8g未満、WHOでは5g未満とすると、管理栄養士さんが監修しているお弁当に含まれている塩分量はさすがに多くても2gくらいかな?と思いますが…。お弁当のNa量を見てみると1180mgと記載されています。塩分相当量はNa量の2.54倍に相当するので、塩分量は約3g…。

Na量は1180mg

つまり、このお弁当を三食分食べただけでも、目標量(7〜8g)をオーバーした一日9gの塩分摂取をすることになってしまいます! (あるゼミ生によれば、1食食塩3.8g相当の”栄養士監修バランス弁当”もあったそうです…)

その他にも、以前NHKで放送された「道は険しい? “減塩社会”への挑戦」[5]では、夫が高血圧と診断され、調理に使用する食塩や醤油の量を減らし始めたご家庭での夕食の塩分含有量を測定したところ、調理で使用する食塩量は0.7gであるにも関わらず、1食のトータル塩分含有量は5.8gになってしまう衝撃の事例が紹介されました。

では、管理栄養士さんが監修して下さっている健康志向のお弁当や減塩に気をつけているご家庭の食事のどちらも塩分量の面ではヘルシーではないのはなぜなのでしょうか?

実はその理由は既存の調味料・加工食品中に含まれる塩分量が多いことにあります。例えば、NHKで取り上げられた夕食には、醤油やマヨネーズなどの調味料に2.4g、ソーセージやハム等加工食品に2.7gの塩分が含まれていました。日本人の摂取塩分のうち約70%が加工食品からの摂取によるもの[6]です。食品として販売されている段階ですでに多量の塩分が含まれているため、自宅で添加する食塩の量を減らしても減塩にはあまり効果が出ないのです。

日本の減塩傾向は今後終わる?!

減塩政策は世界的に進んでいますが、世界の減塩戦略を調査したシステマティックレビュー[7]によって、塩分摂取量が徐々に減っている国には2種類、つまり啓発活動のみを行っている国それらに加え加工食品への介入を行っている国に分けられることがわかっています。

前者の啓発活動しか行っていない国は中国と日本に限られ、これらの国の塩分摂取量の減塩傾向は、啓発よりも寧ろ食文化の変化による摂取食品の変化の影響が大きい可能性が高いと同システマティックレビューで結論付けられています。それを裏付けるものとして、中国では塩分摂取源の大部分を占めた家庭での食塩添加割合が1991年から2009年の間に80.8%から69.7%に減少した[8]ことや(図5)、日本では現在ナトリウム摂取源の1~3位である醤油、味噌、魚介類や漬物の摂取割合が減少(1984年から2016年の間に塩分摂取量は12.2g[9]から9.8g[10]となっている中、醤油の出荷量は120万kLから78万kL[11](図6) 、味噌の消費量は67万トンから46万トン[12]、魚介類の消費量は1200万トンから730万トン[13]、漬物の出荷金額は3800億[14]から3300億[15])していることが挙げられ、食文化の変化を大きな要因として塩分摂取量9g程度の欧米と同程度の塩分摂取量レベルにまで下がっているのが今の中国と日本なのです。

(図5)中国での塩分摂取源割合

一方、後者の、啓発に加えて加工食品に介入を行なっている国々は食品中の塩分量自体を減らしています。様々な加工食品への介入を行ったアイスランド・アイルランド・イギリス・韓国・スロベニア・デンマーク・トルコ・フィンランド・フランス・リトアニアといった国々では平均0.29g/年、つまり過去10年間の日本の約3倍もの速度で減塩が進みました。

食文化の変化の大きな手助けによる減塩には当然ながら限界があり、依然として塩分摂取量の多い日本は今後、食品への介入を伴う減塩を行うべき段階に差し掛かっています。現に、日本の減塩傾向は頭打ちになってきており[16]、中国も加工食品への介入が行えていないことから、高塩分摂取が今後も継続すると予測されている事がレビュー研究でも指摘されています[17]。

啓発活動による効果は限定的

以上のように、啓発活動のみ行なっている中で、塩分摂取量が減っている国は、食文化の変化による影響が大きいとされる中国と日本のみで、減塩において啓発による効果は限定的であるようです。このように、啓発活動は、どのような条件・方法でも良い効果があるとは限らず、その例としては受動喫煙やがん検診が挙げられます。

受動喫煙では、宮城県の成人非喫煙者を対象に調査を行ったところ、教育年数が短い人は非喫煙者であっても受動喫煙にさらされやすいという社会格差が確認され、個人が知識を持っているだけでは職場での受動喫煙を防げないことが示されました[18]。諸外国の研究でも同様に社会経済的状況(SES:socio-economics status)が低い人々は禁煙キャンペーンによるメッセージの効果が低い事が指摘されています[19][20][21]。
また、がん検診においては、マスメディアによる啓発が大腸がん・子宮頸がん・乳癌のいずれの検診の受診率の増加に対しても効果があると言える十分なエビデンスは得られておらず [22]、1対1の教育や手紙による受診勧奨・再勧奨といった他の施策の実施が重要となっています。

このように、日本では、国は啓発活動を行い、食生活の変化に大きく起因する減塩を少しずつ進めています。しかしながら、この効果はいつまで続くか分からない上に、上記で指摘したように、すでに陰りが見え始めています。一方、欧米諸国では食品中の塩分含有量自体を減らすといった積極的な介入を行う段階に入っており、日本は減塩に関して大きく遅れを取っていると言える状況です。人々が健康的に長く生きることのできる社会の実現を目指すのであれば、日本でも加工食品中の塩分含有量を減らす為の積極的な介入が必要となってくるでしょう。日本でもどの加工食品からの塩分摂取量が多いかは、近年の研究でも、すでに指摘されています[23]。適切に加工食品への介入を行なえば、諸外国のように塩分摂取量をさらに減らす事ができるのです。

そこで、こうした知見を踏まえた上で、瀧本ゼミでは啓発活動に頼らず真に効果のある政策実現に向け動く「減塩プロジェクト」を立ち上げ、今回メンバーを募集することにいたしました!

【減塩PJメンバー募集】

このプロジェクトでは現在、日本の減塩政策を変えていく為にヒアリング・ロビイングを行っています!そこで、一緒にこのプロジェクトに参加するメンバーを募集します!
募集人数:2名程度
応募条件:学生又は院生
応募された方には面接をさせて頂く予定です。

このプロジェクトに携わっている私は、この団体に入るまで、1日2食カップラーメンを食べている知人等を見て、「皆が健康的な食生活を送りやすい社会にしたい」と何となく感じる程度だったのですが、入ってからは、リサーチを通して減塩問題についてより詳細に知り、「減塩問題解決に自分も貢献したい」と思い、現在に至っています。医療・栄養に興味のある方やこの記事を読んで日本での減塩を進めたい!と思った方、応募をお待ちしております!

減塩プロジェクト メンバー応募フォーム
応募はこちらから

現在、政策分析パート・JaSSK合同説明会を行っています!減塩PJに関心がある方のみならず、真に効果のある問題解決法を学びたい方、自身で発見する能力を養いたい方はぜひ一度説明会にお越しください!

瀧本ゼミ政策分析パートでは、2018年度春より活動に参加する新規ゼミ生を募集しております。
新歓情報はこちら

出典

[1]Ikeda N, et al. What has made the population of Japan healthy?.The Lancet Volume 378, Issue 9796, Pages 1094-1105.
[2]Intersalt Cooperative Research Group. Intersalt: an international study of electrolyte excretion and blood pressure. Results for 24 hour urinary sodium and potassium excretion.BMJ 1988;297:319-328.
[3]Akira Fujiyoshi, Takayoshi Ohkubo, Katsuyuki Miura,et al. Blood pressure categories and long-term risk of cardiovascular disease according to age group in Japanese men and women.Hypertension Research 2012; 35:947–953.
[4]厚生労働省 スマート・ライフ・プロジェクト http://www.smartlife.go.jp/plus1tool、2018年4月18日取得.
[5]クローズアップ現代 2014年9月4日(木)放送 道は険しい? “減塩社会”への挑戦
http://www.nhk.or.jp/gendai/articles/3546/1.html
[6]Anderson CA, et al. Dietary sources of sodium in China, Japan, the United Kingdom, and the United States, women and men aged 40 to 59 years: the INTERMAP study. J Am Diet Assoc. 2010; 110: 736-45.
[7]Trieu K, Neal B, Hawkes C, et al. Salt Reduction Initiatives around the World – A Systematic Review of Progress towards the Global. PLoS One 2015;10-7.e0130247.
[8]Shufa Du, Andrea Neiman, Carolina Batis,et al. Understanding the patterns and trends of sodium intake, potassium intake, and sodium to potassium ratio and their effect on hypertension in China. The American Journal of Clinical Nutrition. 2014;99-2:337-340.
[9]厚生労働省『「国民栄養の現状」レポート:昭和59年』http://www.nibiohn.go.jp/eiken/chosa/kokumin_eiyou/1984.html、2017年10月30日取得.
[10]厚生労働省『平成28年 国民健康・栄養調査結果の概要』、p21、http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/kekkagaiyou_7.pdf、2017年10月30日取得.
[11]醤油情報センター『醤油の統計資料 平成29年版』https://www.soysauce.or.jp/arekore/、2018年4月18日取得.
[12]e-stat 2016年度 食料需給表 品目別累年表 3-14 みそ https://www.e-stat.go.jp/stat-search/file-download?statInfId=000031672947&fileKind=0、2018年4月18日取得.
[13]e-stat 2016年度 食料需給表 品目別累年表 3-10 魚介類 https://www.e-stat.go.jp/stat-search/file-download?statInfId=000031672937&fileKind=0、2018年4月18日取得.
[14]経済産業省 昭和59年 製造品に関する統計表 1 品目別出荷及び産出事業所数(従業者4人以上の事業所)http://www.meti.go.jp/statistics/tyo/census/H28t_hinmoku.xls、2018年4月18日取得.
[15]経済産業省 平成28年 製造品に関する統計表 第2表 品目別出荷及び算出事業所数(従業者4人以上の事業所) http://www.meti.go.jp/statistics/tyo/kougyo/archives/zip/HIN_1984.zip、2018年4月18日取得.
[16]平成28年 国民健康・栄養調査
[17]Hipgrave DB, Chang S, Li X, Wu Y. JAMA. 2016 Feb 16;315(7):703-5. Salt and Sodium Intake in China.
[18]Yusuke Matsuyama,et al. Social Inequalities in Secondhand Smoke Among Japanese Non-smokers: A Cross-Sectional Study. Journal of Epidemiology 2018; JE20160184.
[19]Niederdeppe J, Kuang X, Crock B, Skelton A. Media campaigns to promote smoking cessation among socioeconomically disadvantaged populations: what do we know, what do we need to learn, and what should we do now? Soc Sci Med. 2008 Nov;67(9):1343-55.
[20]Niederdeppe J, Farrelly MC, Nonnemaker J, Davis KC, Wagner L. Socioeconomic variation in recall and perceived effectiveness of campaign advertisements to promote smoking cessation. Soc Sci Med. 2011 Mar;72(5):773-80.
[21]Durkin S, Brennan E, Wakefield M. Mass media campaigns to promote smoking cessation among adults: an integrative review. Tob Control. 2012 Mar;21(2):127-38.
[22]Sabatino SA, Lawrence B et,al. Effectiveness of interventions to increase screening for breast, cervical, and colorectal cancers: nine updated systematic reviews for The Guide to Community Preventive Services. Am J Prev Med 2012;43(1):765-86.
[23]Takimoto H, Saito A, Htun NC, Abe K. Hypertens Res. 2018 Mar;41(3):209-212. Food items contributing to high dietary salt intake among Japanese adults in the 2012 National Health and Nutrition Survey.

この記事は東京医科大学医学科1年のIが執筆しました。

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